東京高等裁判所 昭和53年(行ケ)137号 判決
本件商標は、別紙(一)記載のとおり、「MIKIMOTOPEARL」の欧文字を左横書きにしてなり、その構成各文字が同一の書体、大きさ及び間隔で一連に表わされたものであるところ、その前半の「MIKIMOTO」の文字はローマ字読みして「ミキモト」と、また、後半の「PEARL」の文字が「真珠」を意味する英語であつて、「パール」とそれぞれ称呼されることは、わが国における英語普及の程度からみても、まず疑いをいれる余地がない(この点は当事者間にも争いがない。)から、本件商標から「ミキモトパール」という称呼が生ずることは明らかである。
ところで、成立に争いのない乙号各証及び弁論の全趣旨によれば、御木本幸吉は、明治年間に世界で初めて真珠の養殖に成功し、その後も長年にわたり研究改良に専念したのみならず、世界各国に真珠製品の販路を発展させ、日本の代表的な輸出産業の一つにしたため、数々のエピソードとともに「世界の真珠王」と称されるまでに高名となり、「ミキモトパール(MIKIMOTOPEARL)」の名称は、御木本幸吉の製造販売にかかる高級真珠製品あるいはその営業自体を表わすものとして、日本国内はもとより世界各国においてきわめて広く知られるに至つたが、御木本幸吉の御木本真珠と称せられて来た右事業は被告株式会社ミキモトがこれを承継したところから、少なくとも本件商標の登録出願日及び設定の登録日の当時より、「ミキモトパール」「MIKIMOTOPEARL」の各表示は、一般に、御木本幸吉の偉業を想起させるとともに、その事業を受継いだ右被告会社の製造販売にかかる様々な真珠製品あるいは右被告会社の営業そのものをも表わすものとして認識され、かつ、「ミキモトパール」と一連に称呼され、きわめて著名であつたことが認められる。
右認定の事情に鑑みると、本件商標「MIKIMOTOPEARL」は、その指定商品中化粧品、香料類について使用される場合においても、「御木本」「MIKIMOTO」が「真珠」との関連においてきわめて著名、顕著であるのに対し、単なる「PEARL」(真珠)の語は、比較的に一般的普遍的な用語であることからして、「MIKIMOTO」と「PEARL」とが、ひとたび結合された場合には、結合したままの状態で認識受容されやすい自然的傾向を肯認するに難くないから、「ミキモトパール」「ミキモト真珠」「真珠のミキモト」と一般に認識受容され、本件の場合、特にこれを「MIKIMOTO」と「PEARL」又は「パール」と「ミキモト」などと分離しないしは各別併存的に認識されたりして、称呼、観念されることは、まず考えられず、一体一連に結合して称呼、観念されるとみうべく、仮りに、本件商標が取引上簡略化される場合がありうるとしても、精々、前半の「MIKIMOTO」の部分から「ミキモト」と称呼、観念されることがあるやもしれずというにとどまり、後半の「PEARL」の部分から「パール」とのみ称呼、観念されることは、「御木本」の前認定の著名性に徴しても、取引上まずないということができる。
一方、引用A商標は、別紙(二)記載のとおり、「パール」の片仮名文字を縦書きにしてなるものであり、また、引用B商標は、別紙(三)記載のとおり、「PEARL」の欧文字を左横書きにしてなるものであるから、それぞれその構成文字に相応して、単に「パール」の称呼及び「真珠」の観念を有するにすぎないことが明らかである。
したがつて、本件商標と引用各商標とは、外観、称呼及び観念において相紛れるおそれがない非類似のものというべきであつて、原告が主張するように称呼及び観念において類似するとはいえないから、本件審決の判断に誤りはない。
よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。
〔編註〕本件に関する商標は左のとおりである。
別紙(一) 本件商標
<省略>
別紙(二) 引用A商標
<省略>
別紙(三) 引用B商標
<省略>